2013年8月16日金曜日
老人とタカシ
「じいちゃん、じいちゃん、肩たたきしてあげる」
「おうおう、タカシはいい子だなぁ」
「ねえねえじいちゃん、聞いてもいい?」
「よしよし何でも聞いてごらん」
「人って死んだらどうなるの」
「うーん」
「先生は、死んだら何もかもなくなるから、危ないことはしちゃだめだって」
「うんうん、そうだなぁ」
「でも、ばあちゃんは死んだけど、オボンに帰ってくるんでしょ?意味わかんない」
「タカシは賢いなぁ。そうそう、人は死んでもな、魂は死なん。そういうことなんだよ」
「タマシイってなに?」
「うーん、心みたいなものだな。ばあちゃんは死んだけど、ばあちゃんの心は生きているから、お盆になると帰ってくるんだよ」
「ふーん。じゃあさぁ、みんなもう死んじゃったらいいんじゃない」
「・・・うん?」
「みんな死んだら、タマシイだけになって、一緒にいられるんでしょ?じゃあみんな早く一緒に死んだらいいんじゃないかな。死んだ方がいいよね!」
「タカシ待ちなさい、タカシ!・・・とりあえず座りなさい。いいか・・・、死んだ人間は天国か地獄へ行くんだ。いい人間は天国へ行く。悪い人間は地獄へ行く。ばあちゃんは、いい人間だから天国へ行った。だからワシらはばあちゃんに会えるように、しっかり生きていい人間にならなくちゃいけないんだ。わかるか?」
「でもさっき、じいちゃんは僕のこといい子だって言ったじゃん。いい子なら天国に行けるんじゃないの」
「待て待てタカシ、自分で命を粗末にする人間は、どんなにいい子でも地獄へ行くんだ。それは、命を粗末にするのが悪い行いだからだ」
「じゃあ命をソマツにしないで死ねばいいの?」
「タカシ、自分で死のうとするのが、命を粗末にするということなんだ。わかるか」
「タサツに見せかければいいってこと?」
「全然違う、タカシ。それはハズレだ。というかそんな言葉どこで覚えてきたんだ」
「本で読んだ」
「タカシは本が好きだからなぁ。偉いなぁ」
「えへへ。じゃあ死んでいい?」
「待ちなさいタカシ。それは偉くない。死んだら偉くない」
「えー、じゃあばあちゃんは偉くない?」
「いや、ばあちゃんは偉い。そうじゃなくて、たとえばばあちゃんは病気で死んだ。そういうふうに、生きようと精一杯頑張ったけどダメだったときは、偉い」
「病気になればいいの?」
「違う違う。ばあちゃんは、病気になりたくてなったんじゃない。なりたくなかったんだけど、病気になった。そういうことが大事なんだ」
「わかった!僕も病気になりたくないけど頑張る!」
「わかってない!タカシ、待ちなさい。何をするつもりだったんだ」
「何って、病気になるように頑張るつもりだけど」
「まず、病気にならないように頑張りなさい。そうしないと天国には行けない」
「うーん、難しいね」
「そうだ、難しいんだ」
「わかったよ、じいちゃん、僕まだ死なない」
「うんうん、それでいいんだ。そうだ、肩たたきのお礼にお駄賃をあげよう」
「わ、ありがとう!じいちゃんはいい人だね。・・・あっ、そうか!」
「待ちなさいタカシ。たぶんそれは間違っている」
登録:
コメントの投稿 (Atom)
0 件のコメント:
コメントを投稿