2011年7月15日金曜日

繋がらない

 Aは苛立っていた。何に対してなのかわからない。でも、何かに対してぶつけなければならない衝動がずっとあった。このままでは壊れてしまうというとき、自分によく似たBに出会った。だからAは、喜んでBに苛立ちをぶつけた。Bの欠点を見つけるのは簡単だった。欠点を見つけるたびにAはますます苛立ってBにそれをぶつけた。繰り返し繰り返し。でも、いくらぶつけても、Aの苛立ちが消えることはなかった。

 Bは嘆いていた。意味も理由もわからぬまま他人の悪意にさらされて、心も体もぼろぼろだった。このままでは壊れてしまうというとき、自分によく似たCに出会った。だからBは、喜んでCを蔑んだ。Cは自分によく似ているけれど誰にも必要とされていない。苛められてさえいない。何の役にも立っていないCを蔑むのは簡単だった。Cを見るたびに自分の方がましだとBは思った。繰り返し繰り返し。でも、いくら蔑んでも、Bの痛みが消えることはなかった。

 Cは寂しかった。誰も傷つけず誰からも傷つけられない日常の静けさに恐ろしさを感じた。幻覚や妄想がこの空白を埋めてくれるならいっそ狂ってしまいたいと思っていた。このままでは壊れてしまうというとき、自分によく似たXに出会った。だからCは、喜んでXに恋をした。Xのことを愛しく想うのは簡単だった。平穏を崩さず、視線だけがXの姿を追っていた。くり返しくり返し。でも、いくらXを想っても、Cの寂しさが消えることはなかった。

 Xは苛立っていなかった。嘆きもせず、寂しくもなかった。自分が壊れているのか壊れていないのかわからなかった。なぜならそれは元の形と比較した評価であり、元の形なんて幻想だということをXは知っていたから。Xは誰かと出会っても、誰にも興味を抱くことはなかった。淡々と簡単な生活を過ごしていった。繰り返し繰り返し。そしてときどきため息を吐く。これはいつまで続くのだろうと。細く、長く、ため息を吐く。

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