2009年11月24日火曜日

変換してみる

 例えば立ち読み客ばかりの書店に、突然ショッカーが現れる。奴らは唖然とする客たちを余所に奇声を上げながらしばらく店内を跳ね回る。そして笑い出した一人の子供に目をつけると、三人で取り囲みソフトタッチ。子供は泣き出しはしないものの、歪んだ笑顔のまま固まってしまった。ショッカーたちはそれを見てアイコンタクトを交わす。そして子供を抱きかかえた。客たちは事態を飲み込めないまま立ち尽くしている。相変わらず店内に流れ続ける安物のラブソングがいかにも滑稽だった。

 いったいどうするつもりだろうとレジ越しに眺めていると、彼らは逃走するでもなく子供を抱えたまま店内を跳ね回り続けた。誰か通報しろよ、と思い客たちの顔を見回す。彼らは皆不安そうな顔を浮かべながら、しかし睨むようにこちらを見ている。

 跳ね回るショッカーの一人がこちらに近づいてきて、突然カウンターを小さく叩いた。そして僕に対して何かを促すようにあごを突き出す。やれ、お前の番だ、ということらしい。店内にいる大人全員の意向のようだ。どうやら拒否権はないらしい。

 「あー、お客様の中に仮面ライダーはいませんか」


 そんな妄想を繰り広げて時間を潰すことがたまにある。自家製人力ARだ。今回の設定ではこの後名乗り出たライダーとショッカーがわざとらしい殺陣を演じてショッカーは殲滅(といっても店から出るだけ)、そして親玉の怪人が登場しライダーはピンチ、そこに助けに来たウルトラマン、わかってるぜ兄弟的な大仰な頷きあいを見せた後で怪人フルボッコ、退場する怪人を横目に握手会開始、以上のようなプログラムになっている。バイト中どれほど暇なのかがご理解いただけると思う。

 しかしこういった無理やりの妄想は、現実にすり合わせる過程で笑うどころか全力での思考へ移行してしまうことも間々ある。その上現代社会においては、もっと手軽に平易に分かりやすく、しかし拡張性を十分備えて、という要素が多く求められている。従って以下のような妄想による暇つぶしを提案する。



 一昔前のヒーローは一般に○○マンという形が多かった。この妄想は、そのヒーローの“マン”を“さん”に置き換えることによって一気に胡散臭くしてみる遊びだ。

 【ウルトラマン → ウルトラさん】

 ウルトラさんはきっと冴えない中年の男性で、ややでしゃばり。本質的には真面目なので、二十年前先輩に職場の空気作りは大事だと言われて以来そのことに少なからぬ使命感を感じている。が、実際には彼が頑張れば頑張るほど部下たちの表情は硬直していくという、ありがちな善意の悪人。口癖は“ウルトラ”。一応若者に合わせているつもりだから、もう周囲は笑うしかない。

 【アンパンマン → アンパンさん】

 ここで言われているアンパンとはつまりシンナーの俗語である。アンパンさんはどうやらいつも夢を見ているようで、右に左に揺れながら寂れた裏通りを歩いていく。アンパンさんの過去を知る者はこの街にはいない。誰も彼に近づかない。誰も彼を見ようとはしない。でもきっと彼の目もこの世界を見ていないのだからおあいこだ。アンパンさんは夜に歌う。歌声だけが街に響く。夜、アンパンさんを見たことのある人はいない。けれど誰もがその歌声の主をアンパンさんと知っている。つまりそれが、この街におけるアンパンさんの機能だ。


 まあだいたいこんな感じ。他にも【スーパーさん】とか【スパイダーさん】とか【ロックさん】とかいろいろ展開できるので、暇だったら試してみるといいだろう。ちなみに、妄想しすぎて表情が緩むと変人と思われるので、そう思われたい人や既にそう思われている人以外は注意が必要だ。

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